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言語病理学者ケリー・オバートのインタビュー第一弾を公開します!

先日行われた、言語聴覚士ケリー・オバート氏の特別セミナーが大好評でした!
厳密には彼女はSpeech Language Pathologist (言語病理学者)に当たりますが、日本の法律ではこの区分けがないため、言語聴覚士としてお話しをします。
彼女は「言語聴覚士」「声の研究者」「ボイスティーチャー」でもあるため、様々な角度から声はどのように作られていくのか、声の病気とはどういうものなのかなど、3回に渡り盛りだくさんに話していただきました。
1回目のセミナーでは軟口蓋についてや、声の病気についてお話ししていただき、そこで出た質疑応答の部分を特別にご紹介します!

Q:軟口蓋の位置は母音発声時は上がっている状態で、下がっている状態はエネルギーを除外してしまうということで間違いないですか?

A:そうですね。軟口蓋が上がっている状態で母音を発声している時は、はっきりした発声になると思います。
これは鼻を摘むことで確かめることができます。鼻に息が漏れている時は、鼻を摘む時に声質が変わるので、エネルギーが失われていることがわかると思います。

Q:軟口蓋のSuper High Positionは通常のしゃべりやスピーキングのエリアは超えているので特別なトレーニングで身につけていくというイメージですか?

A:そうですね。正しいと思います。
舌と咽頭のお話をするときにどういう風にするかは次回の講義でお話ししていきます。

Q:軟口蓋はNasal Consonants(鼻にかかった子音)を歌うときは下がりますが、高音のエリアに来た時に常に高い位置に持ってくるのは不可能なので、子音を長く取らないなどの工夫は必要ですか?

A:そうですね。もしくは母音に切り替わった時にすぐにまたSuper High Positionに持って行けるかが重要になってきます。
実際、私はNasal Consonantsの時は長めに保つようにしています。というのも弱い音なので観客が聞こえる速度が遅いため、それを長く持つことによって、その音の変化がちゃんと聞こえるように注意してやっています。
「m」という部分を長くすることによってそこの音を大きくするような感覚でやらないと、例えば10m先の観客は、その「m」という部分がちゃんと聞こえません。なのでそこを少し長くするように注意しています。
ですのでNasal Consonants(鼻声子音)は気持ち長めに大きめにしないといけません。
その直後の母音ですぐ軟口蓋が上がるような切り替えができる感覚を身につけてほしいです。
シンガーのトレーニングとしては、Nasal Consonantsを使ってその直後の母音ですぐに口の方に流れているかという確認をするのが効果的でいいと思います。

Q:胃食道逆流症についてですが、アメリカの音声学会などにいくと直ちにこの話が上がってきますが日本はそうでもありません。この辺についてはどのようにお考えですか?

A:注意しておくべき点としては、ある時期、耳鼻喉頭科医が患者全員に逆流性食道炎があると診断していた時期があったのでこの名残もあるのかと思います。
少しでも赤みがあると「これは逆流性食道炎だ」と言っていたのですが今ではそれが正しくないことがわかっています。
ですので、今はもう時代が変わってきているのでアメリカの学会で右も左も逆流性食道炎の話をしているわけではありません。
一部の耳鼻咽頭科医はもう全くそのように診断しないケースも出てきています。
でもマクドナルドをたくさん食べているような人は逆流性がある可能性はありますよね(笑)

Q:結節の初期症状ではステロイドは反応すると思うのですが、結節の手前の炎症だからステロイドが反応しているのか、完全に結節になってしまったらステロイドは反応しないのか。

A:そうですね。正しいと思います。
初期の状態では、少し腫れができていて粘膜層が固くなっていない段階です。
その場合はステロイドと療養によって治ることがあります。これは結節の初期症状になります。

Q:コーヒーは声に影響がありますか?

A:コーヒーは酸味が少し入っているので、飲んだ直後から咳が出る人もいます。
それが気になるようでしたらコーヒーはやめていただいた方がいいと思います。
酸味が全くないコーヒーもありますがあまり美味しくないと個人的に思います(笑)

健康的な20代から40代くらいまでは全く問題がないと思います。
50代・60代の年配になってくると筋肉の衰えで食道の括約筋が弱くなってくるので、そういう場合はコーヒーが問題になってくる可能性もありますが、若くて健康な大人でしたら特に問題ないかと思います。
残念ながら人生を豊かにする良いものというのは年をとるにつれて一つ一つなくなっていく感覚になります(笑)

Q:声帯溝症の生徒がいますが、どこまでがボイトレの範疇ですか?

A:言語聴覚士ができることは、実はほとんどなく、そのままボイストレーニングを続けてもらって大丈夫です。
一つ知っておいていただきたいのは、ザラつき・ハスキーな感じがなくなることはないということ。
ですが、声門閉鎖を高めるトレーニングだったりトワングを強めるような訓練をすることはできます。
そこにフォーカスをしていき息っぽい音をやらない方に向けることは大事です。
ハスキーさがなくなることはないので、それが自分のサウンドとして認識していただくこと。そういう声だとしてもより良いシンガーになることは可能です。
こういった個性だと捉えていただくことが大事です。

あとはザラつきが全くない・完璧な声を目指すというプレッシャーから解放されるということも精神的に重要な点だと思います。
声帯溝症があるシンガーはポップスでは実はすごく活躍できます。

オペラは完璧に透明度がある声でなければいけないのでオペラ歌手よりはポップスで活躍の場があると思います。
そしてもう一つ覚えておいていただきたいことは、ザラつきがあったとしても歌うことによってそれが悪化することはないということです。
掠れた声があったとしても病変が悪化しているということはありません。

いかがでしたでしょうか?

実はこの質疑応答の時にも実際にデモンストレーションをしながら答えていただく場面もあり、ボイストレーナー・シンガーが今すぐ取り入れられるような対策を教えていただきました。
「言語聴覚士」「声の研究者」「ボイスティーチャー」だからこそわかることを聞ける機会はなかなかありません。

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解説しているインストラクター

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター

アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。

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