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歌う人のための呼吸のトレーニング方法

前回は呼吸の知識についてお話ししました。
ではこの知識をどのように活用していくのか見ていきましょう。

歌唱時では避けておきたい呼吸法

前回もお伝えしましたが、歌唱時では避けておきたい呼吸法があります。

胸式呼吸

息を吸う時に胸鎖乳突筋と僧帽筋を使って肺を上方に向かって持ち上げる胸式呼吸です。
胸鎖乳突筋は首の根本の中心から耳の後ろにかけてあり、首の中でも一番大きい筋肉です。

これを使ってしまうと、発声の前に首を絞るような動きになってしまったり、不要な筋肉を巻き込んだ発声になりやすいので一般的には避けた方がいい発声です。
発声時に首にプレッシャーを与える癖は取った方が良いので、胸鎖乳突筋、僧帽筋ではなく胸郭の動きと横隔膜の動きで呼吸ができると良いです。
吸い方としては胸郭を広げる、お腹が少し出るようなイメージで息を吸ってあげると良いと思います。

通常、何もしていない時は胸式呼吸をしていなくても、「息をたくさんを吸ってください」と言われると胸式呼吸になってしまう方は多いので、歌い始めの首や肩の動きは注意してみてください。

高い気流音

息つぎをする時に息を吸う音が聞こえるパターンです。この音は声帯がちゃんと開いていない、声帯が半分閉じた状態から聞こえる気流音になります。
これは声帯を閉じておく筋肉を休めていない状態です。

声帯を開閉する筋肉にも役割があります。声帯を閉じておく筋肉(内転筋)は速筋といい瞬発的な動きは得意ですが、持久力は弱いという特性があります。この筋肉は声を出すためというよりも瞬発的に物が入ってきた時に弾き出せるようにするためと言われています。

声帯を開いておく筋肉(外転筋)は遅筋で呼吸するために開いてキープさせておく役割があり、持久筋と言われています。
なので気流音が聞こえている声帯の状態は、声門を充分に外転させておらず内転筋の活動が行われています。喉頭を上げた状態で吸息を行われていることが多く、緊張状態が続いています。

呼吸の吐き方についても注意

吸息時に胸鎖乳突筋と僧帽筋の活動を抑えながら胸郭を広げたら、呼息時(発声時)の初動で胸郭を一気に縮めないように注意をしてみてください。そして一定の息を吐いたら徐々に胸郭を縮め始めましょう。いきなりグシャっと胸郭を縮めるようなアクションをしないということです。

具体的なエクササイズ

具体的なエクササイズの方法をご紹介します。

ステップ1.好きな音程か、簡単な音階でいいです。例えば5tone(ドレミファソファミレド)を使ってみましょう。腕を組みながら行うと胸郭の広がりがわかりやすいと思います。息を吸って胸郭が開いたのを確認したらなるべくキープしたまま5toneを発声してみましょう。

ステップ2.最初の数秒間は胸郭が開いているのをキープしてみてください。胸郭をずっと開きっぱなしというのは不可能なので、目安としてはドレミファソの上りぐらいまで胸郭が開いているのをキープして、そのあとは胸郭が開いているのを我慢しつつ縮めていく訓練をするといいと思います。

声は呼吸と共鳴と声帯振動の3つが連動し合うことによって作ら

最後に、声は呼吸と共鳴と声帯振動の3つが連動し合うことによって作られています。
ボイストレーナーはこの3つをバラバラに聞くようにしていきますが、これは連動し合っていることなので呼吸の方をいくら直しても声門がちゃんと閉じていなければ先ほどの胸郭を開きっぱなしにするということは不可能です。漏れ放題になってしまうので胸郭はどんどん縮もうとします。
また息を頑張って押し出そうとしているのにも関わらず声帯がガッチリ閉じてしまっていたら息は全然逃げてくれないので、胸郭が縮んでいかないなんてことも起き得るかもしれません。

ですので呼吸・共鳴・声帯振動、この3つが連動し合っている中でどこにエラーがあるのかを探していくといいでしょう。
呼吸のプロセスは複雑にしすぎない方がいいと思います。シンプルではありますが、このような呼吸の仕方を経験されたことない人からすると非常に難しいプロセスになります。

発声のアイディアにしていただければと思います。
今回お話ししたことは科学的に間違ったことは言っていないので、もし間違った認識が常識化されているのであれば参考にしていただければ幸いです。

解説しているインストラクター

桜田ヒロキ
桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター

アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。

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