「音域を書く欄」適切な書き方は?
2023.05.17
ミュージカルのオーディションなどで、よく「音域を書く欄」があります。
これは悩まれる方も多くいらっしゃるかと思います。
実際に「どのように書けばいいですか?」とかなりの頻度で質問を受けています。
この質問、実は本気でお答えしようとすると非常に難しいのです。
なぜ音域を書く程度の事が難しいのか?
あるミュージカル女優さんのホームページのプロフィールに書かれた音域はE3からG6です。
これを鍵盤上で表してみるとこんな感じです。
3オクターブ以上なので、とても広い音域になります。
この音域に対して生まれてくる疑問がいくつかあります。
・実際に歌唱に耐えられる音色で歌える音域なのか?
・どの音楽ジャンルでその音域を使えるのか?
・これに書かれた音域で声を伸ばす事もできるのか?
・1曲でその3オクターブを縦横無尽に動きまわることができるのか?
この女優さんが声楽曲を歌うソプラノだとすれば、E3の音を出す事はほぼありませんし、ましてやG6をベルティングで出すなんて出来るわけもありません。(笑)
ここで重要なのが、歌う音楽のスタイルやジャンル、音形、諸々の条件にによって声の出し方は変わります。
従って使える音域も変わるという事です。
このようにただただ「○から○までの音域を歌えます」と言うのは、どんな声色や出し方なのか、ジャンルも明確でないため、あまりに意味のない記述かと思います。
実際のアーティスト本人にお送りした例です
では実際に桜田ヒロキがアーティスト本人に送った例をご紹介します。
こちらのアーティストはポップスのアーティストなので、送る前段階として以下の情報を聞き取っています。
・歌うジャンルはポップスであるか?
・作曲家さんが、提出された音域を元に作曲したりキー決めをするのか?
その上で、下記のような情報を共有します。
【地声の音域】
※低音の限界低音
A3(この辺りの声くらいまでが太めの声)
G3(触る程度なら可能)
※高音の限界音
C5(伸ばすのであればこの辺りまで、 B-B♭くらいの伸ばしがとても良いと思います)
D5くらいまで (当て音ならこの辺りまで)
【裏声の音域】
F5(もっと出ますがこのくらいまでが綺麗だと思います)
【主に使うと良いと思われる音域】
B3-B4くらいの音域が最も声が映えるので、この音域を中心に書くと良いと思います。
もし情報に過不足がありましたらお気軽にご連絡下さい!
これらを図にするとこんな感じです。
ここまで書いて、やっと実際に曲を作ったりキーを設定するのに必要な情報になると考えられます。
このように見ると「あれ?思ったよりも音域狭い。」と思いませんでしたか?
女声のポップスで書かれる地声を想定すると、主に書かれている音域はそこまで広くはありません。
女声の特徴の1つとして、音域の割合は地声1 : 裏声2だと言われています。(男声の場合、地声2 : 裏声1)
現状の音域の書き方に求められていることは?
現状のような「○〜○まで出ます。」と言う大ざっぱな音域の書き方で役に立ちそうなことを挙げてみました。
・大まかに広い音域を持っているか?
・それなりに訓練されているか?
・とりあえず大まかな音域を書ける程度の音楽能力を有しているか?
・アーティストがファンを驚かせるため(笑)
この程度ではないでしょうか。
逆に「○〜○まで出ます。」と言うような大ざっぱな音域の書き方で、そのオーディションで何の役に立つのか、教えてもらいたいくらいです。
オーディションを開催する側だったら
もし音域の確認をちゃんとしたいのであれば下記のような質問が好ましいかと思います。
・地声の音域
・地声の伸ばせる音域
・裏声の音域
・裏声の伸ばせる音域
伸ばせる音域を記載している理由としては、その音域上下少しずつが音楽的な音色で歌える可能性が高いからです。
現状の「どこから、どこまで」が記入のフォーマットであれば、オーディションを受ける側は「単純に出る音域」を書けば良いと思います。
オーディションを受ける側の方はぜひ参考にしてみてください。
また開催する側の方にも参考になれば幸いです。
解説しているインストラクター
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セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター
アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。
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