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歌声の音響解析を実践的に行う

こんにちは!VTボイストレーナーの三浦優子です。
先月から始まっているVT初のボイストレーナー育成、認定講座【VT-RV】のリチャード先生の音響学・音声学の基礎講座、全3回が終了しました!

音響解析にはVoceVistaを使用

最終回の今回はVoce Vistaという声の分析ソフトを使って、実際に受講生の声を分析しました。
このVoce Vistaというソフトには多くの機能が備わっていて、まずは前回のおさらいも含めてリチャード先生が[mi][ma][mu]と発声した時にスペクトログラムとパワースペクタルではどのように表れるかというとことを確認しました。

スペクトログラムを見ると、
・a母音は強度が強い
・i母音は2000〜2500Hzが強い
・u母音がこの中で1番弱い
ということがわかります。

※各種母音のスペクトログラム上での比較

u母音が弱いのは、他の母音に比べると顎が上がり狭くなり、唇も尖っていて開きも小さくなるからです。
また第一共鳴点、第二共鳴点の両方が低いためです。
制御をかけられる母音でもあるのでボイストレーナーが好む母音の一つでもあります。

喉頭の上げ下げによる共鳴点の変化

同じ音のスケールを同じ母音で、ナチュラルに歌っている時(ニュートラル)と喉頭を上げて歌う時(ハイラリンクス)とをVoce Vistaを使って比較しました。
するとハイラリンクスの方が高い周波数にエネルギーが集まっていることがわかりました。
ニュートラルな方は第一共鳴点が二つの強い倍音の間にあり、ハイラリンクスの方は第一共鳴点が100Hzくらい上がっていました。
スピーチサイエンスではスペクトログラムで全てがわかるわけではありませんが、このようにハイラリンクスでは共鳴点がちょっと上がっていることがわかりました。
同じ母音を発音しようとしても喉を上げると「あ」の場合であれば「え」に近くなることにより共鳴点が変わってきます。
共鳴点が上がると声がガリっとしたような不快な声をまとったり、叫び声に近い声になるため、喉を上げないようにすることが大事だということが科学的にわかりました。


※上段がニュートラル。下段がハイラリンクス発声。

ハイラリンクスのデモのスペクトログラムを見ていた時に、ふと思い出したことがありました。
まだVTに出会う前の学生時代、ミュージカルをするときにいつも私はマイクが割れていて音響さんが頭を抱えていました。
その時はハイラリンクスという言葉すら知らず、ただ声が大きいだけだと思っていたので声を抑えたりマイクを離したりしていたのですが、それでも割れていたので悩んでいました。
原因はハイラリンクスだよとあの頃の自分に教えてあげたいです(笑)

ヘッドボイスとベルティング発声の比較

続いては女声のヘッドボイスとベルティングを比較しました。
ベルティングを出すときの特徴があります。
一つは喉頭が上がることによって管の長さが短くなるため周波数も上がることです。
もう一つは、ベルティングは声帯の圧着が強くなるため声帯の閉鎖がより強くなっているので、周波数が高い方にエネルギーが加勢することです。
圧着が強すぎる、閉鎖が強すぎると流れる空気も少なくなり、ハイラリンクスになればなるほど共鳴点の周波数が高くなりすぎたり、喉頭の上の部分が狭くなりすぎて収縮しすぎる傾向になります。
なので、ベルティングでは叫び声にならないようにバランスをしっかりとることが大事です。


※上段がヘッドボイス 下段がベルティング発声
ヘッドボイスは第1倍音と第1共鳴点が合致
ベルティング発声は第1倍音と第②倍音の間くらいに共鳴点がある(と思われる)

A♭4を比較するとヘッドボイスでは第一共鳴点が基本周波数と一致していて424Hzでしたが、ベルティングでは第一共鳴点が第一倍音と第二倍音の間あたりにきていて587Hzでした。
第2共鳴点はヘッドボイスが2144Hz。ベルトティングが2345Hzでした。
このようにヘッドボイスよりもベルティングの方が共鳴点が上がっていることがわかりました。
耳で声が良いかという音質がわかりますが、スペクトログラムやパワースペクタルを見ることで、なぜその違いが起きるのかを可視化することができます。

博士論文のエコーによる舌の形状、音響解析からも学ぶ

終盤にはリチャード先生の博士論文の中から顎の下からの舌のエコーも見せていただきました。
エコーのモデルはC5〜G5を発声している時のもので、“良い“とされるシンガーは硬口蓋と舌の部分の間に空洞ができていて、“悪い“とされるシンガーはこの空洞がほとんどなかったことがわかったという実験のものでした。


※技術的に優れているとされる歌手の舌の位置、あ母音でミドル〜ヘッドボイスへ移行。
ピッチの上昇とともに舌が前上方に移動するのがみられる。
一方、技術的ではない歌手は、ピッチ変化と連動した舌の位置の変化は見られなかった。

そしてこの両者の声をVoce Vistaで分析をすると、“良い“とされるシンガーは基本周波数である第一倍音が1番強くなっていることがわかりました。
このようにボーカルコーチとして科学の部分を理解できていれば、スペクトログラムの中で何を目指せば良いかがわかります。
また、教えるツールとしての教材、生徒を見るときのフィードバック、良い歌唱の分析をするのにも役立ちます。

次回からは音響・音声学を理解した上でボイストレーニングの講義

全3回あったリチャード先生の講義はこれで終了。
難しい内容もたくさんありましたが、理解していくと面白いなぁと感じた1期生も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
次回からは桜田先生によるボイストレーニングの講義になります。
リチャード先生から学んだことがボイストレーニングの講義にも活かされていくのが楽しみです!

ボイストレーナー資格認定講座VT-RVのページはこちら

VTチームの資格講座の音響学のクラスの様子はこちら
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解説しているインストラクター

三浦優子
三浦優子
大阪音楽大学短期大学部ミュージカルコース卒業
宝塚音楽学校附属宝塚コドモアテネ卒業
幼少の頃からクラシックバレエを習い、毎年行われる発表会やその他数々の公演、業界最大手の舞浜大手テーマパークのショーやパレードに出演。
ダンスパフォーマンスにおいては特に活躍を遂げ、忙しい日々を送ると同時にボイストレーニングを続けるが、自分の悩みを解決できる先生となかなか出会えず「これで上達できるのか?」と不安を感じ、次第に歌を諦めてしまう。
そんな中、発声を科学的に捉え、的確なトレーニングを行えるVTチームの存在を友人から聞き、VTチームのレッスンを受講。
ハリウッド式ボイストレーニングに感銘を受ける。
現在は自身の「踊りながら歌う難しさ」を克服した経験を活かし
「ダンサーとしてミュージカルの舞台に立ちたい」
「ミュージカルに出演しているが、シンガーの枠に入りたい」
という方々を中心としたサポートに向け、勢力的にトレーニングを行っている。
全米ヨガアライアンスRYT200を取得し、ヨガインストラクターとしても活躍中。
クライアント一人ひとりに合った姿勢矯正を行うことにより、発声の改善、呼吸の改善、ダンスの改善を行い、クライアント様から高い評価を得ている。

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