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共鳴腔の役割 倍音の基礎知識編

こんにちは。VTの桜田ヒロキです。

今日は前回のマニアックなブログに引き続きこの3つで発声を行っていますよと言うお話の続きをしたいと思います。

Respiration呼吸
Phonation発音
Resonation(共鳴

Resonation(共鳴)

ここで書く共鳴と言うのは、「こういう体感がある」とか「ここに音を当てる」といった体感的な話ではなく、少なくとも科学的研究をしている先生方と話をしても恥ずかしくないレベルであり、せっかくブログですので「ビジュアルで見る事が出来る」と言う観点で書こうと思います。

フォルマントとは?

フォルマントとは?とGoogle先生を使って調べていきましたが僕が探したところ残念ながら歌唱に耐えられるレベルで書かれている文献は存在しませんでした・・・。

「フォルマントは共鳴腔の容積によって作られるAcoustic Value(音響数値)である。」と考えるのが最も自然でしょう。
まぁ・・・わからないですよね。。。

例えば、ペットボトルに水がある程度入った状態で息を吹き込むと高い音が作られます。
空間容積が狭い = 高い音をブーストする

ペットボトルに水をそこから減らした状態で息を吹き込むと低い音が作られます。
空間容積が広い = 低い音をブーストする

「広い空間は低い音をブーストする特性がある」そして「狭い空間は高い音をブーストする特性がある」と言う事が言えます。

低い音を作るためには広い空間、高い音を作るには狭い空間が必要と言う事ですね。

共鳴腔の役割は「それぞれブーストしたい周波数帯域に合わせて空間を拡げたり狭めたりする事」と考えれば良いと思います。
その共鳴腔のサイズの変化によってブーストされるエリアが変わる=フォルマントの位置が変わると考えればいいでしょう。

ただし何度でも口をすっぱくして言わなくてはいけないのは、声帯で作られる音そのものが倍音をしっかりとふくんだ音でなくてはいけません

声帯にきちんと張りがある=地声的な声→声帯で作られる音はアヒルの声やブザーのような鋭い音

声帯に張りがない=裏声的な声→声帯で作られる音は息っぽい口笛のような音

前回の声帯で作られる原音のお話はこちら

※フォルマントの詳しい話は次回に続きます・・・!

倍音って何?

ボーカリストもミュージシャンも科学者ではないので「倍音」と言う言葉を極めて曖昧、と言うかよく分からずに使っている方が多いようです。
「倍音とは?」をWIKIで調べてみました。

倍音(ばいおん、英: overtone[1]、harmonic sound[1]、harmonic overtone、harmonics)とは、楽音の音高とされる周波数に対し、2以上の整数倍の周波数を持つ音の成分。1倍の音、すなわち楽音の音高とされる成分を基音と呼ぶ。

だそうです・・・。
ちょっと難しいですね。

では倍音を実際に見てみましょう。

5.5kHz_AH
※母音AH 音程220Hz

これは、A3(220Hz)を母音の「あ」で発音したスペクトラルグラムです。
これは「音がどこの周波数にエネルギーを持っているのか」を可視化したグラフです。
(周波数=音の速さ=音の高さになります)

最も左の山から「基音(発音した音程)」「第2倍音」「第3倍音」….と数えていきます。
第1倍音は220Hzですので、第2倍音は440Hz、第3倍音は660Hzとなっていきます。

おっと、数字が沢山出てきて「うわー!」とならないで下さい!(笑)
単純に倍音の法則さえ理解してしまえば、そんなに怖くないですので・・・。
ちなみに桜田ヒロキ。完全に文系の人間なのではっきり言ってこの手のお話は苦手です!
あ、文系と言っても高校の英語のテストで2点を取ったことは内緒です。

数式で言うと・・・
第1倍音 基音×1=○○
第2倍音 基音×2=○○
第3倍音 基音×3=○○
ほらルールが見えてきましたね!

最も簡単な考え方としては、第1倍音を100Hzとした場合、第2倍音は200Hz,第3倍音は300Hz,第4倍音は400Hと数えれば良いそうです。

※重要 この数式は人間の声も楽器も例外なく当てはまります。

ここでシンガーのみなさんに理解いただきたいのは数式などではなく、倍音と言うのはマジカルワードでもなんでもないと言う事。
そして「倍音が多ければいい。少なければ悪い。」ではなく、この様に可視化する事も計測する事も出来る物であると言う事です。

・・・と考えたら、なんとなく倍音という言葉をぼんやりと捕らえる必要はなくなりますよね!
困ったらスペクトラルグラムのアプリをダウンロードして見ればいいだけです!

ちなみにこのフォルマントの話は次回に詳しくしますが、「あ」の母音では倍音の山のグループが2つあるのが見えますね?
これはフォルマントと呼ばれるもので、左側(低音側)のグループは喉の共鳴、右側(高音側)のグループは舌の奥から唇の先までで作られています。

声帯で作られた倍音をブーストするのが共鳴腔のお仕事

ただ、上で見た倍音のグラフを見ると1番左の基音、つまりその音程にあたる音がとても弱い事に気付きませんでしたか?
むしろ3番目、4番目以降のエネルギーの方が強く作られていますね?

これは共鳴腔で3番目以降の音が強くブーストされている事を示しています。

そして、この共鳴腔で作られるブースト=人間の声の個性であり、これこそが人間の声の美しさなのです。

僕達の声は、それぞれとても個性的な物ですよね。
僕とあなたの声を聞けば、ほとんどの人が「あ、これは桜田の声だ!」と分かりますよね。

ピアノやギターはどうですか?
耳の肥えたミュージシャンであれば聞き分ける事が出来ます。
でもそうでない人はほとんどその違いを分からないでしょう。

それは、人間の声に比べて楽器は倍音情報がシンプルな形をしているからです。

11kHz_440_piano
※ピアノ A4 440Hz

これはピアノの音、A4(440Hz)を先ほどのスペクトラルグラムで可視化した物です。

どうでしょう?
ピアノの音は最も左の基音のエネルギーが最も高く、それ以降はなだらかに落ちていますよね。

倍音の山を全体的に見ても明らかに人間の声の方が複雑な形をしていますね。
これが人間の声の個性を顕著にする「倍音の多さ=個性の多さ」となるわけです。

ちなみに楽器のお話が出ましたので、ここでまた別の2つの音を見てみましょう。

11kHz_440_Flute
※フルート A4(440Hz)

11kHz_440_SAX
※サックス A4(440Hz)

違う楽器で倍音の山を見てみると顕著に違いますよね!!
フルートは倍音を多く含んでおらず、サックスは倍音を沢山持っていますね。

でも・・・あれれ?
これって人間の声に例えられませんか・・・?!

フルートの音ってなんだか、口笛の音に近い気がしますし・・・・人間の声で言うとファルセットの音みたいですね!
サックスはどうでしょう?なんだか、強い地声のように感じられませんか?

では、声の種類ごとに見比べてみましょう。

5.5kHz_AH_A4
※地声的発声 A4(440Hz)

5.5kHz_AH_A4_A4Fal
※裏声的発声 A4(440Hz)

これはどちらも桜田ヒロキの声です。

これを見ると倍音が多い=地声的に聞こえる。
倍音が少ない=裏声的に聞こえる。
と言う事が見てわかるのではないでしょうか?

※追記: パヴァロッティのようによく鳴る声はまるでトランペットのような声で、女性の声楽は比較的フルートのような声ですよね。
ここに発声のヒントが沢山あるわけです・・・!

今日はある意味、倍音講座のようになってしまいましたが・・・・次回は倍音をブーストする共鳴腔の核心、そう。フォルマント本編に迫っていきます!
どうぞお楽しみに・・・!

フォルマント編はこちら!

Youtubeの上記動画でも倍音のお話をしています!
ご参考までにどうぞ!^^

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解説しているインストラクター

桜田ヒロキ
セス・リッグス Speech Level Singing公認インストラクター(2008年1月〜2013年12月)
VocalizeU認定インストラクター

アメリカ、韓国など国内外を問わず活躍中のボイストレーナー。
アーティスト、俳優、プロアマ問わず年間2000レッスン以上を行うボイストレーナー。

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