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ヘッドボイス?チェストボイス? 声区について科学的に考えてみよう!

みなさんこんにちは、VT Artist Developmentボイストレーナー小久保よしあきです!

今回から数回に渡って、
声区について”しっかり”書いてみようと思います。

Twitterで先行して書いた文章を
まとめたものになりますが、結構難しいです。
わからないキーワードは、ブログの他の記事を
参照頂けると大体載っているかと思います。

はじめに(そして最も重要!)

声区とは、歌う人全員の興味にして、最も難しい問題です。
改善法はハリウッド式の得意分野なので
生徒さんはレッスン来て貰えれば良いのだけど(笑)
科学との結びつけがなかなか難しいのです。

科学的に「声区はここから!」という証明はされていません。
「この点では声区はここって予想できる」って感じです。
また、歌唱指導的にも声区はバラバラ。

よって、声区の科学的証明は現状困難となっています。

指導者や生徒は、共に扱うメソッドに従うことが

“本質的”

だと思っています。今のところ。

なので科学的にどう考えられているのか書くと、
みんな混乱しそうなので書かないつもりだったんだけど、
少しずつ書いていきたいです!

最近ずっと本やエクセルとにらめっこしたものの、
結局分かんなかったので(笑)

頭の整理も兼ねています。

※現象が限定されるので歌で使われるような音域で書いていきます。
無視するのは、基本周波数が80Hzを切るような低音

(連続した音にならずパルスを知覚させ、聴いた感じ声区っぽい)、

あとホイッスル。
声区の現象を考えるにはかけ離れた音域かと思うので。

筋肉(TA&CT)から声区を考える

まずは筋肉から声区を考えてみます。
僕の動画にもある「甲状披裂筋TAと輪状甲状筋CT」。

「低音はTA、高音はCTが優勢。だから声区をつなぐには、
間の音域はTAとCTを徐々に入れ替えればいいよ!」

って説明をしているんだけど、実は詳細な現象とは程遠いのです。

声帯は実は層構造になっていて、いくつかの分け方があります。

このうちの
3層構造(内側から筋肉、靭帯、粘膜)
で捉えていきたいと思います。

なぜ層で捉える必要があるかというと、
実はTAとCTの働きによって、声帯振動時の主役となる層が換わるから。

TA(甲状披裂筋)について

声帯振動時の主役。ちょっと言い換えて、振動の応力がかかる層。

声帯の筋肉というのは、TAのことです。
TAは筋肉なので力が入ると収縮し固くなりますが、
それによってTA自体に振動の応力がかかるようになる。

3層でいうと”筋肉”に応力がかかるのです。

TAが働くと声帯は披裂軟骨より更に下に出っ張り、
互いの声帯は分厚く接近することになります。
これが太く芯のある音を作り出します。

分厚さに関して言うと、
男性は思春期の激的な声帯の変化で
この分厚さがデフォルト起こるため、この音色は顕著です。

尚、分厚さ自体は基本周波数への影響はありません。
基本周波数に影響があるのは、硬さ、長さ。

ここで良く考えて欲しいのは、「低音域ほどTA優勢」という言葉の本当の意味。

TA優勢=応力であって、力加減ではない。ということです。

では実際TAに力が入るとどうなるのか。

・層でいう”筋肉”に振動応力がいき、声帯は固く短くなる
・固い=高い音、短い=高い音

つまり、TAに力が入ると高い音が出る
つまり、TAのみで考えると「低音ほどTAは力が抜けている」

TAに力が入ると高い音になることはお分かりいただけたかと思います。
でもここで重要なのは、「どのくらい高い音になるのか」ということ。

結論言っちゃうと、低音域ほど高音に連れていきやすいです。
100Hz、200Hzは余裕、300HzくらいならTAで無理なくいけますが、
徐々にその頑張りほど高音には届かなくなります。

限界は予測でC5あたり。

このようなTAの限界でもって
声区移動が起こるとする仮説を最大負荷仮説といいます。

「C5までチェストボイスでいけるんだ〜」

じゃないからね(笑)。

無理なくできるのは300Hz(D4)あたりまでらしいです。

さてこのTAの最大負荷仮説に基づくと、男女差はないそうです(笑)。
最大筋緊張に性差はないそうな。

ということは、

男女ともに、300Hzあたりまでが無理なく、C5までが限界ってこと。

これはあくまで筋肉から見た科学の1仮説なので、
女子の皆さん、勝手にD4にブリッジ作らないでね(笑)

CT(輪状甲状筋)について

TAのみでは音程的に殆どの歌が苦しくて歌えません。
というわけで登場するのが輪状甲状筋CTという筋肉です。

輪状軟骨と甲状軟骨の間にあり、
力が入ると声帯を間接的に引っ張る働きがあります。
TAは声帯を縮小すると考えると、TAとCTは拮抗する関係です。

CTに力を入れて声帯を引き伸ばすと、
層的には「靭帯」が堅くなり、
結果、靭帯に振動応力がかかります。

ふつう長い物ほど音は低いですが、
それ以上に堅くなることの影響が強いため、
引き伸ばし堅さを上げるほど高音になるのです。

このとき、TAの力が入っていなければ、
層でいう筋肉は弛緩した状態。

つまり、

「TAに力が入れば筋肉、CTに力が入れば靭帯」

に、振動応力がかかります。

CTに力が入り靭帯が硬くなると、
その分かなり高いピッチまで連れていくことができます。

これは私見だけど、靭帯の硬度に個人差があったとしても、
ポップスで使うような音域はほぼ誰でもカバーできると思います。

なので「高音は輪状甲状筋CTで出そう」と言われるのです。

ちなみに基本周波数100Hzや200Hz程度よりもさらに高い音の方が、
靭帯の硬度は高音に連れていきやすいようです。

最低音付近ではむしろ長くなるだけでピッチはやや下がります。

ここまでを踏まえて、筋肉の側面から声区を考えてみようと思います。

TAとCTからみた声区

TAに力が入ることで声帯が分厚く振動できるということは、
CTのみに力が入った状態では「声帯は薄いまま」ということです。
これは声帯原音に大きく影響します。

声帯原音は高次の倍音にかけてなだらかなスペクトル傾斜を持ちます。

振動周期における声帯の合わさっている時間が長いほど
傾斜角度が平坦(倍音が強い)です。
分厚さがひとつの要因となるため、

TAは強い倍音、CTは弱い倍音。

CTのみの弱い倍音は超高音域でもない限り半端なく弱いです。
歌ではやはり、倍音のしっかりしたTAの音が”広い音域で”求められます。

そこで、

低音→高音に向かう際、

TAのみでは難しい音域にさしかかる前にCTに徐々に力を入れ、

TAはその分力を入れすぎずむしろ緩めるようにし、

振動応力を筋肉から靭帯へと徐々にシフトします。

すると、ガクッと声帯原音の倍音が減衰せず
高音まで”繋がった状態”を作ることができます。

「倍音を含む声帯原音」を、
無理なく高音域まで発声するための最も重要な筋運動です。

で、そのバトンタッチの動きを起こさないと厳しい音域が

300Hz(D4)周辺っぽい。

恐らくそれは決まってはいませんが、大体その辺のようです。
前に言ったけど、筋肉的には男女ともに同じです。

今の説明をグラフにしたものがこちら横がTA、
縦がCT、各縞が基本周波数。
点線の上を弓状に上がる矢印が”繋がった発声”。
まあ結局、かなり早い段階でCT使うってことです。
TAの減衰は300Hz周辺あたりからかな。

(※縞の幅は、呼気圧による声帯湾曲の影響を表してます)

このグラフで把握したいのは、
少しTAの活動増やせば100Hz→200Hzにいけるのに、
200→300→400Hzとなるにつれ難しくなること。

そしてCTでは逆であることです。

補足で肺内圧の説明

縞模様は同じ基本周波数で、
内側の線が高い肺圧、外側が低い肺圧を指しています。
肺圧が上がると基本周波数が上がるので、
TAとCTはその分緩められることを示しています。

一体なぜか?

それは、肺圧が上がるほど、声帯が振幅時に
「弓状にしなって伸長」するため、基本周波数が上がるのです。

なぜかははっきり書いてないんだけど、
声帯が伸長=CTで引っ張るのと同じなら、
たぶん靭帯の硬度が上がり基本周波数が
上がるってことなのではと予想しています。

肺圧(声帯のしなり)による基本周波数の変化は、
低音ほど出やすいです。短い声帯ほど割合伸長するからです。

まあようするに、ある特定の基本周波数を出したいなら、
TA&CTと肺圧は、トレードオフの関係っぽいです。

おわりに

僕は、筋肉であるTAとCTの動きから声区を考えることは、
身体運動を直接捉えることができるため大切だと考えています。
この後、

「声門下共鳴が声区に与える影響」

について書いていきますが、
共鳴の影響といっても、結局筋運動が
正しくできちゃえば良いとも言えるわけで、
このTAとCTの理解の方が本質的と思います。

ただし、ハリウッド式のトレーニングでは
母音や子音を活用して声区をつなげることを得意としています。
その効果の背景を少しでも理解するために、
このあとの声門下共鳴の説明はとても有意義です。

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