私たちの提唱するメソッドでは、低い音程から高い音程まで、喉頭が低く、安定した位置に保たれており、さらに声帯が合わさっていれば、基本的に問題はありません。
もし、どこかの音域で喉頭が上がったり、下がったり、音が息っぽくなってしまったりすれば、(声帯が離れていると言う事です。)ボーカルプロセスで、何かが間違っていると言う事です。
喉頭は顎のすぐ下、首の真ん中にある大きな膨らみを中心とした、軟骨、筋肉で構成された部位の事です。
この中には声帯や、食べ物を飲み込む時に、使われる嚥下筋が入っています。
喉頭が上がると、声帯の周りの筋肉が括約筋として動き、喉頭蓋、声帯は閉じる事で、飲み込んだ物を、気管や肺に送らない様に防いでいます。
これは物を飲み込む時には、とても大切な事ですが、歌を歌おうとする時には、とても乏しく、起こって欲しくないプロセスです。
喉頭の上に手を当てて、あくびをすると、喉頭が下がるのが分かると思います。
これは喉頭が低い状態にある、という事を感じるのに、とても分かりやすい方法です。
最終的な目標は喉頭が、上がる時と同様に、下へも移動しない様にしておくことです。
つまりは、喉頭は上昇しようとも下降しようとも完全にそこにとどまっているべきなのです。
ここが私たちのメソッドの、誤解されやすい所です。
「喉を下げる」事を良いとするのではなく、あくまで喉は安定して「上がりも下がりもしない」事が重要なのです。
声帯は、"vocal folds"としても知られている様に、2つの柔らかい筋組織から成り立っており、それらは喉頭の手前から奥にかけて繋がっています。
それらが閉じているときには声門が合わさり(内転運動を起こし)一時的に空気の流れが止まります。
横隔膜から押し出される空気の圧力が、声帯の閉鎖力を越えたとき、声帯の間を空気が抜け、また閉じて、音が鳴る事で喉頭原音が生まれます。
そしてもう一度、空気が声帯閉鎖の力を越えて・・・という過程が始まるわけです。
シンガーがミドルCの上のAを歌う時、1秒に440回、この過程が行われています。
440回の振動を起こしているという事です。
これは早過ぎてシンガーの喉を覗いた所で、見る事はとても難しいですね。
ストロボスコープの発明以来、声帯の共鳴プロセスを見る事が容易になりました。
声帯が離れれば、音が息っぽくなり、喉頭の外部周辺の筋肉が、硬く張ります。
これは収縮発声”constricted phonation”とよばれ、歌を歌うのには有害です。
これは、とても手短に歌うときに起きている事を説明しているだけで、当然、もっと他に多くのプロセスがあります。
しかし、「何が正しいか」を簡単に考えるために、歌を歌っているときに、次の2つのアイディアを用いて観察する事が出来ます。

あなたは、きっとこれらの事を、簡単にやり遂げられる確実なエリアと、少し難しいと思うポイントを見つけるでしょう。
これらの、少し難しいエリアの事を、ブリッジといい、私たちのメソッドのキーポイントである、「ミックス」と「ブリッジ」を理解する事になります。
ブリッジというのは、英語ではパッセージ・エリアと言って、ある声域から次の声域へと変化していくエリアの事です。
イタリア語では、聞いた事があるかもしれませんが、パッサージオといいます。
これらのパッセージ・エリアは、私達が、高音から低音まで歌うために、必要な声帯の調節を行っている結果、起こる、もしくは起こるべきものです。
これらの声帯調節は、胸から頭部へ響きがシフトしているように、体感するエリアでもあります。
最初の共鳴の移行は、ファーストブリッジと言って、最も重要なポイントです。
なぜなら、最も外部の筋肉が働いてしまいやすいポイントだからです。
外部の筋肉が働きすぎてしまうと、音程を作るために、声帯を引き延ばそうとして、喉頭周辺の筋肉を、締め上げていることになります。